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<<IEのformで効かないaccept-charsetの文字コード指定を効かすには?    2006年8月の上高地・岳沢>>
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2006年08月04日

映画『ゲド戦記』を観ての評価-不器用なドキュメンタリー?

[ 7-現代近未来視聴覚研究 ]

 映画を見終わった時、映画館がざわついて不穏な雰囲気でした。映画館から出てくるとき、ジブリ・ファン風の女性のお客さん数人、

「ぜんっぜんっわかんないっ!」

 怒ってますね(^^ゞ そりゃね、もう「命を大切にしない奴なんて大嫌いだ! ファイアー!」で燃やし尽くされたら激しくダブルバインドで悩みますよね。硫黄と火の言葉で酷評するのもいいけど……だけど、この作品をもう一度、どこかで観てもいいかな、と思ったりする。腐海の底の暗闇のような映画館で、鬱々とした気分に浸りながら。

次、「ブレイブ・ストーリー」または「日本沈没」?
(以下、ネタバレっぽいので注意)

 意図的に過剰な期待を裏切るように作ってあるような気もしてくる。子どもにとっては親の期待、逆に、親にとっては子どもの期待。国や民族や宗教、職業の役割期待。「こうでなければならない」という標準化の強制。ある種の理想への同一化や同一視、そういう原理的理想像としての父親を最初に殺してしまって、逃げるところから唐突に始まる物語。
 いきなり監督として呼ばれて、成長させられて、引っ立てられて、目の前にはジブリ・ファンの群れが突進してきていて、その広角レンジに合わせて「大ヒット御礼ビーム」を撃てって言われても困るでしょうね、普通の人なんだから。「世界を驚嘆させた偉大な監督」と「その長男」は、仕事上、なんの関係もないのだし。
 監督はビーム撃たないで崩れた巨神兵、魔法が使えない魔法使い、観客は正義と愛と涙を欲望する王蠱の群れみたいなものだ。群れは今、巨神兵の残骸を避けるように走り抜けている。ハジアのような甘い魔法(のかかったアニメーション)を求める人への、ジブリからの回答かもしれない。
 監督は神でもないし、ジブリの不老不死を約束する魔法使いでもない、まして巨神兵でもない、ビーム撃つ前に崩れますよ……『風の谷のナウシカ』のクロトワだって「く、腐ってやがる…早すぎるよなー」って言うでしょう。本人だって言ってるじゃないですか、言われたからやるんだ、仕事だから、と。会社員だったら、与えられた仕事、断りませんよね……でも実際のところ、できない仕事は断るのが誠実な対応だと思う。それでも失敗したら、一度、徹底的に干されるだろうし、干されてもやりたいなら、その時点で本気になって取り組めばいいと思う。今回はそうとう厳しい評価と沙汰ががあるでしょうから。
 アニメーションという動画で表現したかったのは何? 『ゲド戦記』でやりたかったのは何? 監督本人が掴んでいないように思う。
 それでもなお、この作品のどこかに、光が射しているように思える。傷ついた少年と傷ついた少女が、巨神兵の残骸にもたれて、夕陽を眺めているかもしれないと思う。闘いに破れた、不器用でうち捨てられた、哀しみが漂う寂寞の風景。そこにきらびやかな魔法はかかっていない。真の名を教えてくれた少女のために少年は闘うけれど、偉大な魔法使いでもない少年は、世界はおろか少女一人も救えない。いや、彼は、父を二度殺し、幻想の母までも殺す。あらゆる複合観念を殺す、それゆえにこそ、竜が、彼のアニマが、彼を突き動かすそれが、自由が折り返してくる。

 宮崎吾朗氏がまだ監督業を続けるとして、やってもらいたい作品を挙げるとすれば、三島由紀夫の『金閣寺』。次には映画版『鉄塔武蔵野線』のアニメ化でいこう。チャリンコ飛ばそうぜ。

 ところで「真・ゲド戦記 影との戦い」の件、誰がやるの? ……(^^ゞ

酷評とは違う評の参考:
見えぬものこそ(笑)@壁のしみ

Posted by gont at 2006年08月04日 03:10 | TrackBack