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[ 6-山とある日 ] |
遡行記録
【日 程】 95年7月1日〜2日(1泊2日)
【山 域】 関東・雲取山周辺
【ルート】 大血川西谷支流遡行〜長沢山稜線〜長沢谷桂谷下降
【メンバー】 ゴント(単独)
【行 程】
7/01 太陽寺入口(bus stop)発9:30- 西谷遡行開始(林道屈曲点先の堰堤)11:50-
長沢山と桂谷の頭のコル15:40- 長沢谷1300m付近camp17:30
7/02 camp発5:30- 林道下8:30- (下山→奥多摩)
【天候】7/01 雨のち曇り 7/02 曇り
【詳細記録】
北岳バットレス行きがパートナーの都合で順延となった。そこで急遽、四日前に決めたのがこの沢登り山行である。2万5千分の1地図をながめて、遡行し、下降するルートを引いてみた。わざと遡行図のない沢を狙う。
前日、仕事関係で飲みすぎて帰宅が12時、朝、予定より1時間遅れで三峰まで電車。雨が強い。無理かと思うが、次第にやんできた。まだいくぶん酔いが抜けていない。バスに乗り、太陽寺入り口降車。そばを食べて出立。遅れを取り戻し酔いをさます運動ということで、ぶっとばす。開けた静かな谷ぞいの林道、石灰採石の音だけ違和感がある。おもったほど時間がかからず、太陽寺下を通過、そのまま林道が右へ屈曲する西谷入口まで入る。
大血川林道の西谷へ入るあたりは釣人が多い。つまり「巻道がしっかりとある」という意味だった。堰堤までの20分ほどは鉄の橋まで架けてあり、登山道と変わらない。少し拍子抜けする。もしや、このまま稜線まで、と思うが、堰堤から先はないようだ。ここで地下足袋、わらじになり、ハーネスもつけて遡行開始。水量はちょうどいい。
白岩谷(右俣)を過ぎるまでは問題なく、小滝を登ったり、心地よく進んでいく。もう誰もいないが、人がたくさん入っている感じはいなめない。しばらく左俣を進むと急に両岸が立ち上がり、暗くなる。
本流はゴルジュの連瀑4段15m。右から傾斜のゆるい7m滝が落ちている。右の沢へ入るのが予定だったが、本流にも滝があるとは思わなかった。ふさがれた、という久しぶりの感覚で驚いたが、右の滝は案外すんなりと登れた。気をよくする。その上からゴルジュの連瀑帯。地図でも等高線が詰まっているところだ。イメージを上回っていた。ナメ滝を左からソロリ越えると直瀑5m。ザックが重いので登れない。空身で右壁を登りザックを引き上げるが、ハングした落ち口にひっかかり、独りで大騒ぎ。なんとか上げる。このあたりは暗くて圧迫感がある。慎重さに欠いていた、と反省。「これはヤバイかな」と思いつつ進むと、奥に20m垂直の滝。側壁はコケている。直登無理と判断、左のルンゼから大きく巻く。ヤブには踏跡らしきものがあるが、ケモノ道かもしれない。しばらく降りられず、大滝上の状態はわからない。
降りてからも小滝は連続して緊張する。左岸は岩盤が露出して手が付けられない。巻きはおおむね、左から。しばらく行くとcs滝6mがあらわれる。流水左から取り付いてCSの下まで入ると洞穴だとわかる。狭くて入れないようだ。右に出ようとするが、スベスベにナメており、立ち上がれない。CSとナメ床のクラックにスリングのコブをボトミングして左手でつかみ、右に踊りでる。上のホールドものっぺりしていて、あやうく滑るところだった。ここもザックを引き上げる。スリングは残置したが、あとで考えるとあの部分にはピトンもなかったし、打って抜いたあともみえなかった。先達は洞穴からあがったのか、フリーで越えたのか、たいしたものだ。
この上あたりから次第に沢床があがり空が広くなる。源頭部の雰囲気。薄日も射して、新緑が美しい。小滝が出てくるが問題なし。トヨ状滝8mはシャワーで楽しかった。上部二股は左へ入る。ガレていてしばらく伏流となる。ツメは右から大きなガレが落ち込んでいる。左側で進むが、浮いている。早めに小潅木帯に入ればよかったが、ヤブを嫌ってガレ伝いに行くと、上部ではコケむした斜面になってしまった。ヤブはなかったのだ。あわてて左へ、左へと転進するが、潅木は腐っていてすぐ折れる。しまいには四つん這いになってしまい怖かった。コケ斜面と格闘すること30分、稜線に出た。風があるのでちょっと寒い。かなり早い到着、読図はぴったりだった。
疲れたので次の行動に迷いが出てきた。最初の予定では長沢山南東斜面から長沢谷右谷へ降りるつもりだったが、目の前の斜面はササヤブでどこからでも下れそうだ。傾斜もそれほどではない。なら、下ってしまおう、と思い、5分ほど長沢山へ登り、そこから下降。薄いと思ったヤブは降りるにしたがって猛烈になり、急傾斜なのに身体が進退窮まる。ハーネスをつけていたのはバカだった。強引に下り、水のある沢へ。疲れてフラフラしだすが、小滝で助かる。バランスが極端に悪い。16時30分ごろからビバーク地を探し始める。17時30分、確認。ツェルトを張る。ラジオが入るのがありがたい。谷の向きに関係があるのか。天気はあまりよくないらしい。明日の行動が決まらない。結局、明日になって、日影谷出合まで行ってみなければわからない、となり焚き火をして寝る。
翌日、天気曇。下りは小滝状で問題なし、と思ったが、水量が増して沢が大きくなってきた。あまり不安感はない、というのも釣人の跡が、つまりゴミが多いからだ。日影谷出合の上は大きな屈曲があり、「ここにはなにかある」と思っていた。案の上、滝である。イメージではもっと開けた谷だと思っていたがハズレた。3回ほど高巻き、時間を浪費するが踏み跡はしっかりしている。日影谷出合に到着。このあたりは平坦でビバークに最適、日影谷入り口は平凡なかんじだ。もし、ここにおもしろそうな滝が懸かっていたら、時間のことも関係なくなって行ってみたかもしれない。とりあえず探検気分でザックを置いて、10分ほど入ってみる。小滝のきれいな谷だ。なにか「これで充分だな」という気がして引き返す。長沢谷下降に決定。あとは楽だ、と思ったが、渡渉や小高巻き、へつりが多くなり、けっこう時間がかかる。地図上ではたいした距離ではないのに、なかなか進まない。途中、釣人二人に出会う。やはりいた、という感じを双方もったようだ。
長沢谷自体はコケむしたよい谷だ。浅いトロ状のところもあるし、夏のカンカン照りの頃は楽しくて仕方がないのではないか? 林道へあがる場所まできて、休む。二人組も降りてきた、早い。おそらく高巻き道を通ったのだろう。こちらは水線沿いに下降してきたのだ。そこで二人と、このあたりの谷についていろいろ話込む。4人パーティが上がってきて日影谷へ入る。案外、人が入っているのかもしれない、そう思うと、ちょっと興さめの感。釣人によれば、大きな滝はないとのこと。彼らは別の沢へ入るといって先に林道へ。着替えたあと、まっ黒になったザックを洗い、林道へあがる。釣人の車ばかりだ。
日原へ1時間ばかり林道を下ると、釣人の車。「乗っていくかー」お言葉に甘え、JR奥多摩駅まで送ってもらった。その間、釣りの話をえんえんと聞く。釣りが好きで好きでたまらない、そんな話でおもしろかった。