2006年5月春山-上高地・涸沢・北穂高
快晴に恵まれ、涸沢から北穂高に登りました。
[写真:2006年5月春山-上高地・涸沢・北穂高]
レポートは以下をどうぞ。
[山行名]2006春山:上高地・涸沢・北穂高
[日 程]2006年5月2日夜発−6日夜着(露営2泊、小屋1泊)
[山 域]北アルプス南部穂高岳
[ルート]涸沢〜北穂高
[行 程]
5月2日 アルピコさわやか信州号 新宿発夜行バス→
5月3日 沢渡→上高地 →明神→横尾→涸沢BC設営
5月4日 北穂高ピストン
5月5日 上高地へ下山、旅館泊
5月6日 上高地散策、アルピコのバスで新宿へ
[参加者]ゴント含計2名
[天 候]全行程ほぼ快晴
[メ モ]
- 事故もなく快晴に恵まれ目的の北穂にも登頂できた。
- 自分の荷物は、どういうわけか65リットル+40リットルのザック二つ! 雪山フル装備・二人分の団体装備+食糧が一つのザックに収まらなかった。徹底的な軽量化と圧縮化、装備および食糧の軽量化・現代化が望まれる(^^ゞ
- 上高地でパッキングをやり直し、かつ、着替えや下界用の靴はザック一つ分にまとめてしまって、下山後に宿泊予定の旅館にデポした。普段は小梨平で露営だけど今回は宿を予約した。今回の山行は「奥さんと出会って20周年記念山行」なので。昔に上高地の旅館でバイトしてたこともあるので、舞台裏はよく知っている?
- 夜行バスで徹夜のままの林道アプローチ、中年のオジサンにはキツイ。
- 明神までの間で林道に少しずつ雪が出てくる。今年は雪が多い。それでも横尾まではスパッツいらない。
- GW、快晴、人が多い。でも、どんどん抜かれる。遅いぞオレ。
- 荷が重すぎてスピード出ず。明神・徳沢・横尾まで各1時間で3時間なのに、休憩入れて4時間かかっている。うー、上半身は鍛えてない! ランニングのおかげで脚は強くなっているけど、上半身は筋肉も脂肪も落ちて細くなってしまった。肩に喰い込む背負紐に苦しむ。
- 横尾で大休止して歩きだしたら、左膝が痛い。かなり深刻な痛さ。休んでいる間に冷えてしまったようだ。雪道になって、後続者に路を空けようと踏み跡をはずしたら、膝をかばってしまってバランスを崩してハデに転ぶ。歩けないほどの痛みになったら、その時点で止まって、膝をテーピングで固めて、ザックをひきずって横尾まで戻ろう、と思いながらしばらく無理をして歩いていったら、膝が暖まって痛みが薄らいだ。ゆっくり行けば涸沢までダマせるか? そしてダマし切った。雪道のほうが膝に優しかった(膝がよくない状態だと思うので、帰ったら、整形外科に行こうと思った)。
- 涸沢までの雪道は歩きやすい雪の階段、登山者で数珠繋ぎ(夏路を通らず、沢筋)。ギラギラと輝く涸沢カールが近づき、モレーンのマウンドが見えてきてからが、長い、長いのだ。それでも横尾から3ピッチで上がる。下手に休むとさらに膝が痛くなりそうだった。
- 涸沢は思った以上に気温が高く、また、テント村がにぎやかなので、拍子抜けする。事前の情報から雪が多いことはわかっていたので、春山だからといって油断するな、厳しい冬山のつもりで準備していたのだけど、杞憂だったのか……
- 腐った雪に雪崩の気配を感じる。明日は予定通り早めに出発すべきだ。膝にバンテリン塗布。
- 陽が陰ると急に寒くなった。夕方から風も出てきた。寝不足もあって、すぐに飯にして寝る。
- 3時起床。バンテリン効果で膝に痛みはない。4時45分出発、明るいのでヘッデンを点灯せずに済む(4時には出発したかった、遅くなってしまった)。雪は固まってクラストしている。アタックの荷は風船のように軽いのでラクだけど、歩幅を大きくすると、まだ膝が痛む。慎重に脚を出して、膝が暖まるまで歩幅を短くする。
- 涸沢小屋の右、北穂沢の左の斜面をまっすぐ登る。アイゼンが効く。同様に出発する人多い。抜きつ抜かれつ、登行する。上部もほぼ同様に、沢筋の中心からはずれて、わずかな尾根状の部分を登る。ルートは明瞭。踏み跡は階段になっている。上部に行くほど急登になるが、雪山初心者でなければロープを出す必要はない。特に登りは、傾斜をあまり感じない。膝をかばって速度が出ないが、雪の階段なので歩きやすい。…鋸状の前穂北尾根がパノラマに見えてくる。北穂東稜へとトラバースするパーティもある(いつか登りたい)。
- ストック2本で登っていくパーティがいる。ピッケルのほうがよいと思いますが……下降時にスリップしたらどうする?
- コル状の稜線に出て、稜線をわずかに登れば北穂高岳北峰頂上。8時過ぎには着いていた。さらに北へ向けて少し下れば北穂小屋。ドピーカンにして360度の展望、槍の穂先が指呼に見える。贅沢にも小屋の珈琲を飲む。しばし、眺望を楽しむ。滝谷へと向かうガイドパーティさんたちが多数。今日なら問題ないですよね。いいなー。
- 涸沢カールをベースにして、いろんなルートを登ってみたいものですね。前穂高北尾根、涸沢岳〜奥穂の稜線、涸沢槍に続く左側の斜面、それに吊尾根にダイレクトに抜ける斜面などなど。といっても、単独ではちょっと怖い。
- 下り。アンザイレンする。相棒確保用。相棒を先行させ、こちらは猿回し状態のロープ確保でコンテで進む。早くも雪が腐ってきた。沢の上部の雪面には、横にクラックが走っているではないか。アブナイ。早く降りよう。右側、南稜との間の沢で小規模の雪崩が発生し、緩んだ岩が加速して雪面を転がり落ちていく。このままだとルートに交差する、ラァアーーク! と叫んで注意喚起。下からは、たくさんの登山者が来ている。落石に当たれば骨折では済まない。氷のブロックを含んだ雪崩に襲われても同様。
- 10時近く、さらに雪が腐る。ルートをはずして雪面で休憩していた目の前の登山者が、いきなり滑落する。あっという間に加速、頭を下にしたまま背面で滑っていく。途中の登山者たちから、ピッケル! 制動かけろ! 早く止めるんだっ! と殺気立った声が飛ぶ。運良く傾斜が緩くなる箇所で自然に止まった。滑落距離は200mぐらいか? 途中で岩が出ていなくてよかった。岩に当たれば終わっていたし、止まらなかったら、北穂沢下部の漏斗状斜面の下に出ている岩場に投げ出されて身体が分解していただろう。単純に滑るだけでもケガをする。滑り落ちる際にアイゼンが固い氷にひっかかって足首や膝を骨折するとか、撥ねたピッケルのピックが身体に刺さってしまったり、ピッケルバンドが手首に巻き付いて手首を骨折してしまったりと、さまざまな事故が起こるので、落ちた人が気懸かりだった。場合によっては、ロープでアンザイレンしてミッテルに入れて下山しなければならない。幸いにも、どこにもケガはなかった。ケロっとしていた。うーん、事故が起きなければ「背中で滑って楽しみました」で済むのだけど。
- ピッケルと身体はピッケルバンドやスリングで結んでおく、休憩中は確実に足場を作り、ピッケルを打ち込んで自己確保する。ザックも滑っていかないように、まずはピッケルにスリングで繋いでから肩からはずす…安全を確保したうえで、腰を下ろす…で、お願いします。ピッケルバンドも付けてない人がいるし……下りでアンザイレンしているパーティがいないのはどうしてなんだ? この時間、この斜面は、初心者にとって安全じゃない、頼むから危険だと感じてくれ。できるだけ早くこの斜面から逃れるつもりで、登下降してくれよ……と願いつつ、すばやく下っていく。
- 途中で尻セードで早く降りようかと思ったが、滑落を見てビビッた相棒が滑りを嫌がったので、歩きでボコボコと雪面を降りていき、最後のほうで尻セード。
- 11時前には帰幕。お疲れさんでした。この時間でも、まだまだ、登ろうという人が……自分なら避けて、雪上訓練でもやります。涸沢小屋前の短い急な斜面で雪上訓練ですよ、昨今は滑落停止訓練などはやらないのでしょうか? スタカットやコンティニアスでのビレイ訓練とか、雪洞掘とかイグルー作りとか……学生・社会人山岳会でもない限り、やらないのでしょうね……
- 午後、お茶を盛んに飲みながら涸沢のパノラマを楽しむ。奥穂のザイテングラートの登下降や尻セード、春スキーやボード、あちこちで人が動いている。
- 涸沢ヒュッテのトイレの便座が暖かいのには仰天した。もちろん、トイレは有料です、100円です。きれいにしてあります。そういう時代なのです。
- 雪を溶かして水を作る必要がなかった。水を引いてあって、蛇口から水が出た、驚いたなぁ。
- ビールにおでんもある、晩酌セットメニューもある屋台村……もう驚かない(^^ゞ
- 涸沢で数日過ごしていると思えるテントの周囲には雪のブロックが積んであるので、もしやと思い、自分もブロックを切り出して簡易風防壁を作っておく。案の定、夜間に風が強くなり、時に暴風に襲われてテントを直撃、雪壁がなかったら、夜はちょっと寝られなかったかも。
- マットが薄くて、背中が寒く、夜間は何度も寝返りをうつ。ランニングしているためか、脂肪が減ってしまい、断熱効果がなくなってしまったからだと思う。いつもなら、このマットで充分だったのに。それとも、歳かなぁ。
- 翌日、快晴、下山予定。さっさとパッキング。時間は充分にあるので、ヒュッテの珈琲を飲む。バームクーヘンまで買い食いしてしまう。それでも8時には出発。
- 数日で融雪が進み、本谷橋下からは夏路に変更。涸沢から横尾まで2時間弱で降りてきてしまった。雪道のほうが膝に負担がかからずに調子がよい。
- 徳沢でのんびり昼飯にして、残った食糧を食べて、上高地へ。
- いつものパターンでは、小梨平でテント+アルプル観光[アル観]で16時以降に風呂+18時前に飯、なのだけど、本日はいつもと違って旅館に泊まる。旅館の風呂で汗を流して着替えたら、もう、街の人と同じなのだが…未だに頭の中は山モードなので、どうも勝手が違う。重いザックとバッグ、上高地から宅急便で自宅に送ってしまった。これで帰りがラクになった。
- GWに上高地の宿に泊まるには一ヶ月前には予約する必要がある(登山者用の相部屋なら、GW当日でもたいてい、大丈夫のようですが)。
- 翌日、上高地を散策。昔バイトしていたので、どこも見ているのだけど、自然は何度見ても違って見えるもの。まだまだ、知らないことがたくさんある、無尽蔵にある。見ればみるほど、知れば知るほど、さらに興味が湧いてくる、そういう自然がここにはある。
- それに比べると、人間の世界は探検の広がりがない。たとえば、帝国ホテルのロビーでケーキセットを食べる(1500円)とか。10時からですよ。帝国ホテル、珈琲の味はどこも同じ(当然か)、長居するとさらに珈琲を注がれるのも同じ。
- 河童橋右岸、白樺荘のオープンテラスの喫茶はセルフサービス、パンやおにぎりもある。なんだかなー。でも、眺めは悪くない。
- 五千尺の二階の食堂、カツ丼なら1300円。高いけどおいしい。席は必ずNo.1の席にしましょう。岳沢のパノラマ展望の特等席です。
- 五千尺の一階の売店にはモンベルの出店がある。
- 少し下った西糸屋から見る六百山は美しい。六百山の泥のルンゼ、明神のS字ルンゼ…さまざまな記憶があるけど、小梨に長期で露営して(昔の信州大学山岳部のルンペンテントみたいに)、まだ行ったことのない藪ルートを登ってみたいなぁ、と今でも思う。
- 小梨平のアルプス観光の食堂、流行っていない地味な田舎の食堂みたいな場所ですが、岳沢のパノラマ展望があります。これに枝豆と冷奴と麦酒! があれば、言うことなし。
- 小梨平のビジターセンターの展示物を拝見。普段は素通りしてしまうのだけど、上高地の動植物、岩石、登山情報等、展示情報が充実しています。観て損はありません。
- 午後の高速バスで新宿まで戻る。思ったほど渋滞もなく、19時半には着。上高地でのんびりして充分に休んだつもりだったけど、やっぱり疲れてました。日焼けで顔が黒い……
Posted by gont at 2006年05月07日 11:21
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