南アルプス・甲斐駒-仙丈トレイルラン(JR日野春駅-黒戸尾根-甲斐駒-北沢峠-仙丈ヶ岳)
自主企画トレイルラン。
深夜、日野春駅から走って黒戸尾根に取り付く。甲斐駒ヶ岳からどこまで行けるか??
→アルバム
結果、仙丈ヶ岳まで行って北沢峠に戻ってちょうど15時。15時半のバスで広河原経由で甲府駅へ。
[山行名]南アルプス・甲斐駒-仙丈トレイルラン
[日 程]2006年8月26日前夜発日帰り
[山 域]南アルプス北部
[ルート・行 程]
[→JR中央線日野春駅](0:50)-横手駒ヶ岳神社黒戸尾根取付(02:20)-刃渡り(5:25)-五合目小屋前(6:10)-七丈第一小屋前(6:50)-八合目付近(7:20)-甲斐駒ヶ岳(8:25)-駒津峰(09:30)-双児山(9:50)-北沢峠(10:55)-仙丈ヶ岳四合目(11:45)-小仙丈ヶ岳(12:40)-仙丈ヶ岳(13:20)-北沢峠(15:00)[バス(15:30)→広河原(16:00)→JR中央線甲府駅(18:00)]
[参加者]ゴント単独
[天 候]
曇り時々晴。朝から積乱雲が沸き上がり不穏な感じ。ときどき雷鳴が轟く。3000m付近の稜線は寒かった。前日夕方に集中豪雨があった模様。それでも山道には影響がなかったようだ。
[計画について]
- 登山ではなく、トレイルラン(山岳走)。
- 計画では、仙丈ヶ岳を越えて伊那側の市野瀬まで下りる予定でいたが未遂に終わった。下降したことのない尾根の途中で陽が暮れて雨でも降ったら、疲れ切った身体では危険だと判断。もっと走力がなければ、自分の計画は完遂できないということだった。
- 通過タイムの計算は、標準コースタイムに係数0.5。しかし、岩場があるような場所では登り下りとも0.5では無理だし、後半になるにつれて、係数は大きくなってくる。また、休憩時間も必要。後半は1時間に5-10分ぐらいの回復時間が必要になってくる。
[装 備]
□帽子
□ランニング用半袖(ロード部分)
□ランニング用長袖(山岳部分・寒ければ半袖を上に重ね着)
□ランニング用タイツ
□ラン用靴下
□ショートスパッツ
□ウルトラ用のランニングシューズ
□ポンチョタイプ雨具
□雨具の下
□ランニング用ザック
□ヘッドランプ
□手持ちの小型ライト
□予備電球
□予備電池
□地図
□高度計付時計+コンパス
□バンダナ
□ハンドタオル
□石鹸付きハンカチ
□ティッシュ
□ガムテープ(50cm分)
□レスキューシート
□笛
□小型ナイフ
□記録用デジタルカメラ
□計画書(+予想コースタイム/列車時刻表)
□ペン
□若干の医薬品(バンドエイド、止血ガーゼテープ、キネシオテープ、バンテリンなど)
□着替え一式(できるだけ軽く)
□お金
□保険証コピー
*なお、この装備はランニングをするにはかなり重いと思います。トレイルランをするならば、同じ装備でも、可能な限り軽量なものをお薦めしますし、削れるものは削ったほうがいいでしょう。
*装備を削りすぎれば、トラブルがあった時に命に関わります。ですので、装備や食料については、ご自身の責任において、考えて揃えてください。
[食糧]
□おにぎり2個(走り出す前に食べる)
□ミニピーナッツパン 1連
□菓子パン 1
□アミノバイタルゼリー 小2
□ウィダーインゼリー 1
□飴 15個
□スポーツドリンク用粉末 2リットル分
□予備食(カロリーメイト×2)
[水]
□ポリタン 1L
□ボトル 500mL×2
*途中の水場で適宜、水を補給する
[アクセス]
JR中央線日野春駅下りホームに0時過ぎに着く普通列車。
[季節について]
9月も中旬すぎると日が落ちるのが早くなるし稜線では雪が降ることもある。その前、8月下旬から9月上旬がベストか。
[山行メモ]
- 夕方、仕事も片づいた。助かった、終わらないと行けない。JR中央線普通電車で日野春へ。寝不足、大丈夫かなぁ、と思う。眠れないのならば、喰うだけだ。いろいろと車中で食べる。
- 日野春駅に降りたのは数人、みなさんタクシーに乗ってご帰宅の様子。山に行く奴はオレだけか。駅舎で着替えて出発の準備。ほんとは列車内で着替えるつもりだったけど、まだ通勤時間なわけで……すぐに出発、といっても、準備に20分ぐらいはかかった。今回は時間的余裕がないぞ。
- 駅前からすぐに下に続く歩道を降りて、左に曲がる車道を走ってグングン降りていく。闇なので、ヘッドランプがないと動けない。気温22℃、少し汗ばんでくる。荷物は走るにはちょっと重い。スポーツドリンクを2リットル担いでいる。釜無川を渡る橋で対岸へ、大武川沿いに続く道を緩やかに登っていくと、次第に汗が噴き出す。周囲は水田や畑、雑木林、民家がまばらにある。街灯はほとんどなく、暗い。たまに犬に吠えられる。空は一部分晴れているが、霧で覆われる時もある。上に行けばいくほど、霧が多くなってきた。地図がないと迷う。何度か分岐点で確かめる。「甲斐駒ヶ岳へ」などという道標はないのだから。横手から細い参道の道に入る。この道、ほんとに神社に着くのだろうか? と思うのだけど、道の周囲の手入れがされている感じがして、そのまま入っていく。間違いはなかった、横手駒ヶ岳神社に着いた。深夜に境内に行くのはちょっと不気味だったので止めて、神社の左手から裏の車道に出る。ここから、登山道に入る。約1時間半の走行だった。霧が深くなり、わずかに小雨も混じる。このまま雨降りだったらと思うと、ちょっと気が重い。
- 横手から登山道に入る。途中までとても歩きやすい登山道だったのに、登っていくと、ところどころ悪い箇所も出てくる。なんだか不安だ。不安な原因は道の問題より、心理的なものだ。深夜、一人で霧の樹林帯をガサガサと移動していることが怖い。熊が出るという話しを聞いていたので、存在を知らせるべく、柏手をバンバン撃ちながら登っていく。途中、カモシカや狸に出会って心臓がドキドキ。地図には出てこない沢を絡んで少し急登すれば、笹ノ平に出て、竹宇駒ヶ岳神社からの尾根と合流する。道が広くなった。
- 八丁登り。この距離、この傾斜ならまだへこたれないのだけど、一つ問題が起こった。ヘッドランプの調子が悪い。新しいアルカリ乾電池に替えたのに、フッと光が弱くなって消えてしまい、スイッチを入れ直すと元に戻るのだった。電圧が不安定なのだろうか。量販店の安売りの電池は信用できない、というか、このヘッドランプの電球自体にも問題があるのかもしれない。前に同様の症状が出ていたのを思い出した。ヘッドランプを買い換えようと思った。手持ちのハンドランプを出したり、電池を入れ替えたりして先を急ぐ。夜が次第に明けていく。
- 前屏風の頭の前だった思う。なにか白いものがぼぉおおっと登山道の前に佇んでいる。なんだなんだ、熊か? カモシカ? もっと小さい……な、なんだ……? ギョッとしてしまい、足がすくんで動けなくなってしまった。しばらく目を凝らす、空はすでに薄明るいのに、わからない。正体が分からない何物かが目の前に存在している! 叫びたいが叫べない、とっさに柏手を打った! そしたら、白いものが動いて、人の形になった。人間だ! 遭難者か? 近づくと、フォーストビバークしていた登山者のオジサンだった。銀色のレスキューシートを被っていて、それが薄明の空の光を反射して白く光っていたらしい。向こうも死ぬほど驚いたらしい、こんな時間に、荒い息づかいで登ってくる動物は、熊に思える。話しを聞くと、昨夕、ひどい雨に打たれて日が暮れて、途中まで降りたが疲れてしまい、夜明けを待ってから降りようと思って、待っていたとのこと。遭難寸前の状態なら、トレイルランを中止して、付き添って降りなければならないが、どこも具合は悪くない、自力で降りられる、眠いだけだというので、その場で別れる。ここまで降りているならば、がんばって麓まで降りたほうがいいのに、とその時は思ったのだけど、もしかしたらそのオジサン、ヘッドランプを持っていなかったのかもしれない、と思った。ヘッデンは重要な道具ですよ(自戒を込めて)! 集中豪雨の影響は登山道の所々に見られたけれど、花崗岩のザレが雨を完全に吸収してしまったようで、登山道が川になっている場所はなかった。
- ほどなくして刃渡り。完全に夜は明け、目指す甲斐駒の上には快晴の青い空が見えるけれど、振り向けば積乱雲がどんどん盛り上がって朝日を遮っている。たまに雷鳴ゴロゴロ。もしかして雷雲と競走か? と思って焦る。焦ったところで早くは登れないのだけど。
- 五合目小屋手前の登山道に水が流れていたのでポリタンに補給して通過、次第に梯子・階段が増えてくる。まだ2200m程度だ。あと800m近くあるのに……最初に黒戸尾根を登ったとき、この五合目あたりで、頂上間近と思って油断して、バテバテにバテたことを思い出す。ここからがホントの黒戸尾根だ。
- 七丈小屋を通過。テントからクライマーが出てきて、ザックにロープを詰めたりしている。いいなー、沢もいいし、奥壁も登ってみたいなー……ミニクリームパンを食べて水で流し込んで先を急ぐ、ちょっと遅れ気味だ。
- ぐんぐん高度を稼ぐ、眺望が開けてくる。背後からは霧が追いかけてきて、前方は晴れている。難所の岩には、石碑が置かれ、岩の上には剣が立ててある。駒ヶ岳講の信仰登山者が、石碑や剣を担いで登ったのだろう。駒ヶ岳講は江戸時代に茅野の行者によって開かれたそうだ(その前からすでに道はあったらしいけれど)。今は安定した梯子や階段があるけれど、当時、藪と草付きと苔と岩のミックスした道を登るのはたいへんだったに違いない。花崗岩の側稜が鋭く集まってきて、高山の雰囲気が濃くなってくる。息が少し苦しい。駒ヶ岳神社本社のある峰に登れば、コルの向こうの指呼の間に、甲斐駒ヶ岳頂上が見える。
- 甲斐駒ヶ岳頂上着、40分遅れている。遅れを取り戻すのはおそらく無理だろう。計画変更するか? このまま鳳凰三山へと転進するか。いや、今回の目的は西側にどこまで行けるか、だ。計画通りに北沢峠から仙丈ヶ岳までは行こう、と思う。疲れたので、充分に食糧と水を補給する。北沢峠方面からの登山者が多く、すれ違いに気を遣う。六方石、駒津峰と通過、こんなところはトレイルランどころではない、石がゴロゴロしすぎている。双児山から一気に急降下、北沢峠までもゴロゴロした石が多くて、下りでも速度が上がらない。ともあれ甲斐駒から1000mも降りてしまい、もったいないなぁ、と思う。かなり疲れてきて、先行きが不安になる。
- 北沢峠で11時10分のバスに乗れることがわかる。広河原でシャワーでも浴びて、仮眠してバスで帰ろうか? 心が揺らぐ。まだ時間があるはずだ、ともかく仙丈ヶ岳まで行ってから決めようと思って、再び登り出す。係数0.5、全力で行ってみよう、もしかしたら、タイムを挽回して市野瀬に降りられるかもしれない。仙丈ヶ岳の樹林帯の道は、甲斐駒からの道に比べて、とても歩きやすい、いや、部分的に走れる。
- 森林限界を超え、小仙丈ヶ岳まで上がって、仙丈ヶ岳をみたとき「えーっ、本峰ってあんなに遠いっけ?」と思う。そういえば、高校生の時もそう思ったじゃないか! だが、今は夏、そしてオレはオジサンで運動靴を履いている。走ればいいのだ。
- 小仙丈ヶ岳から稜線で走れるところは走る、今回の「まともなトレイルラン」は、この3000mの稜線走りに尽きる。ガスが湧いて陽も当たらず、北風で寒いこともあって、水平な部分は走っていく。それでも時間は過ぎていき、遅れは取り戻せなかった。走りながら、計画完遂は無理だと判断する。
- 仙丈ヶ岳の頂上には1分もいなかった、すぐに引き返す。計算し直すと、北沢峠15時半だって、このままいけば間に合わないかもしれない。バスに間に合わないと、広河原泊まりになってしまう。なんでこんな計算したんだろう、やっぱり徹夜で疲れているからか? 下降は今までになく真剣に真面目に走っていく。最後の力をここで使ってかまわない。峠までの30分は、学生時代の駆け下りと同じようなスピードだ。こんなことをやると「左膝爆弾が炸裂する」のだけど、今回は不発で助かる。15時ジャストに到着。今回のトレイルランはここまで。計画通りにはいかなかったけど、これ以上は無理なのだし、充分に走った。
- バスに乗り、広河原で乗り換えて甲府まで。このカッコのままで帰るのは嫌だ、銭湯に入りたい。甲府駅前の交番で銭湯の場所を教えてもらう。交番とは反対側の北口から北東方向に歩いて15分。城北の湯(城北温泉、山梨県甲府市北口3-8)。どこにでもある普通の銭湯だった。汗を流し、着替えて、駅前に戻ってマトモな飯。心地よいけど、なんだかどっと疲れが出てきた。
- 甲府駅から普通電車に乗る。足がダルイ。すぐにウトウトする。電車を乗り継いで、その日のうちには、自宅に戻る。
[そのほか]
- 山梨県甲府市の銭湯 一覧
http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Sirius/4471/1010.html
(現在も銭湯が存続してるかわからないので注意)
- 銭湯用の石鹸の持参方法。ハンカチに「ビオレU」を染み込ませてビニールに入れて持っていった。これは正解だった。男性限定だけど、これなら頭から足先まで洗えるのだった。
- *仙丈ヶ岳には、高校生のときに冬に戸台から入った。北沢峠にテントを張ったのだけど、夜がひどく寒かった(マイナス15℃)。夜はホエーブス3台で、鉄タライでカレーを作って食べた。翌日、頂上ピストン。樹林帯を黙々と登り、森林限界を越えると風が強かった。稜線の地形は緩やかで、クラストした雪面にアイゼンを効かせて登っていく…遠くて寒くて消耗した。
- 下山後しばらく疲労が抜けず、風邪気味になったので、葛根湯を飲む。
Posted by gont at 2006年08月29日 23:31
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