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ゴントの書類綴
<<経費は君の印税から引いておく 縄文人の引っ越し>> |
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[ 1-本とある日 ] |
夜、吉祥寺で打ち合わせ。新潮文庫になったばかりの本コロは、果たして週末の画面に……。
コロナビールを飲みつつ、本にまつわる仕事の話しをする……
打ち合わせの相手も山登りをするので、山登りに喩えて本を作る意味を考える。極地法のフィックスロープから離れて、少人数のアルパインスタイルで、別の山に出かけてもいいでしょう? どうせやるなら新ルートを狙おう、いや、狙うべきだし、それこそに意味がある。トレイルのはっきりした、道標のある登山道に慣れすぎている、ガイドも毎回同じ、そうじゃないでしょう、誰も知らないルートを拓いて頂上に立ち、戻ってくる、そのルートの入口にケルンを積むのが仕事じゃないか、と。実際は、組織を維持するために、キャンプ間の荷揚げの往復が多くなってしまう、どの仕事でも、そこから硬直化する。注力して実績を上げれば上げるほど。
吉祥寺から帰ってから組版続行、12時をまわっている。02時半出力完了、宅急便(クロネコのTODAY便)を出しに行く。
空を見れば天頂に夏の大三角形の頂点の一つ、こと座のベガが見える。ベガの近くには淡いドーナツのような星雲があるはず。望遠鏡で最初に見ようとしたのがこの星雲だった。天頂に近づけば近づくほど、赤道儀では苦しい態勢になり、反射型を持っている友人がうらやましいと思った。星雲はアイピースの真ん中に入ってるはずなのに、どうしても見えず、赤道儀のハンドルを何度も微調整する。おかしい。絶対にココにあるはずなのに。ふと、目の焦点を視野の端に移すと、暗い視野にぼんやりと、その星雲のドーナツの形が見えてきた。見たいものを見ようと凝視すると、対象が見えないことがある、そんな眼の仕組みを初めて知った。
目の端に映った空を観れば、そこに新しい山が、未知のルートが見えてくるはずだ。その場所からしか見えないルートが必ずある。そんな山、ルートが見えたら、迷わず行けばいい。