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[ 1-本とある日 ] |
『あなた自身の社会−スウェーデンの中学教科書』(アーネ・リンドクウィスト+ヤン・ウェステル著/川上邦夫 訳/新評論/1997年6月10日/2310円 /ISBN4-7948-0291-9/A5判並製 /228ページ)
bk1だと取扱できないってさ、ひどい話しだね>bk1
店頭売り切れ→注文殺到→在庫ゼロ→増刷! 景気のいい話しだ、しかも、人文関係の本なのだった。
皇太子の誕生日会見で、子どもの養育方針について答えた時に紹介した本。アメリカの家庭教育学者ドロシー・ロー・ホルト(ノルト)の詩「子ども」が掲載されている。新聞やテレビでも紹介されたので、あっという間に売り切れになったらしい。皇太子の会見内容の全文を読むと、お世継ぎの問いに関して、うまくはぐらかしたな、と思うと同時に、未来に不安持ってるのかな、という気もしたのだった。世を継がせる、といっても、とんでもない世の中じゃ困るわけで。昨今の子ども絡みの事件を見れば、子どものうちから「社会」についてきちんと教えておくべきだし、それをしないでいると大変な未来がやってくる(社会を維持するために誰も税金払わないような社会)と思いましたよ、ええ。もっと自分自身/あなた自身の身になって社会を考えてください、と言われているような気もしますね。
そして、この本が売れるというのは、子育てに悩む親がものすごく多いということなのだ……女帝問題とか、そういう話しでこの本が売れたわけじゃない、子どもをどう育てたらいいか、社会に向き合う人間をどう育てるか、高尚で難解なことじゃなくて、実用ことわざレベル(つまり、「魔法の言葉」レベル)で欲しているんだな、と思うのだった。
『子どもが育つ魔法の言葉』(ドロシー・ロー ノルト+レイチャル ハリス著/石井 千春訳/PHP文庫)
ところが、です。子育て実用本はそのままでは売れない、読む人はあくまで大人であり、親。親が安心したい、大人自身と社会との関係について考えてみる、という本が必要なわけで、単なるハウツーだと売れなかったりすると思うわけです。さじ加減が難しい。。
で、さらに……皇太子の発言で最初に『あなた自身の社会』を買おうと思ったのは、実際に小さな子どものいる親じゃないかもしれない。小さい子どものいる親は、そんな情報に接している時間ないし、じっくり本なんて読んでられないだろうし。ちょっと複雑だな……
日本で「生きること」は、いつも「自分がどのように生きるか」という視点で語られる。一方「自分は複数の他人をどのように生かしているのか、どのように生かされているのか」「自分を生かすために社会に何を要求できるか、何を要求されるのか、何を変えることができるか」について最初から失念している(させられている)し、誰も語らない。変わらない環境でのゼロサム・サバイバルゲーム「自分はどのように生きるか」(=自分だけが利益を手にして生き残るには?)という問いのみが突きつけられている。デフォルトでそのようなパラメータしか与えられていないゲーマーは、貯めた得点を握りしめて安らかに眠るが、そのベッドが牢獄におかれていて、灰色の虚無・無力・無責任の壁や天井に囲まれているのを知らない。環境を作っているのは自分たちなのだ、自分たちによってよりよく変えていくことができる、という意識があればこそ、その環境を愛することができる、牢獄そのものを作り替えることができると思う。つまり、あなた自身の社会ならばこそ変えられる、そう思うね。。
Posted by gont at 2005年02月25日 11:24 | TrackBack