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ゴントの書類綴
<<砂漠の雨 ビットハンマー>> |
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[ 8-アフォリズム ] |
>帰還
こんな日は、人が遠くへいってしまう。
彼も彼女も、私という人も、追い払われてしまう。
怒りの曼陀羅は肩口から軋む、
寂れた遊園地の観覧車みたいだ。
言いたいことは言い得ただろうか、
言い得ぬことは言い得なかっただろうか。
夜間鉄塔の歩哨が明日に抵抗しているあいだに、
私が戻ってきてしまった。
では、行くとしようか。
なにも始まらないし終わらない日が、
また始まり、終わる。
>魂の矢に叫びの石鏃を埋め
それは、人の間に住み、弓をしぼる。
張りつめる弦は、その音色を変える。
鋼色に移りゆく人の声は蒼い叫びとなり、
空を覆う。
無数の弦に沿って張りつめられた
鋼色の天蓋は蒼い叫びに満たされる。
それは勝利する。天蓋は裂ける。
裂け目から叫びを殺すそれがやってくる。
逃れた蒼い叫びは、変移し、紅い緩慢な砂漠になる。
起立した弦は無限遠方に向かって鉛直に倒れ、
砂漠の上に黒曜石の鏃となって降り注ぐ。
人は沈み、形を変え、地下に流れる水となる。
ある日、水は砂漠に沸き立ち、再び人となり、自ら弓を張るだろう。
魂の矢に叫びの石鏃を埋め、それに放つだろう。
虹色の約束を思い出させるために。
そして、人々は人々の放った矢に刺し抜かれるだろう。
時は、星を配した天蓋を共鳴させ、人々を祝福するだろう。
Posted by gont at 2006年05月02日 04:05