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2006年05月02日

帰還

[ 8-アフォリズム ]

>帰還

こんな日は、人が遠くへいってしまう。
彼も彼女も、私という人も、追い払われてしまう。

怒りの曼陀羅は肩口から軋む、
寂れた遊園地の観覧車みたいだ。

言いたいことは言い得ただろうか、
言い得ぬことは言い得なかっただろうか。

夜間鉄塔の歩哨が明日に抵抗しているあいだに、
私が戻ってきてしまった。

では、行くとしようか。

なにも始まらないし終わらない日が、
また始まり、終わる。


>魂の矢に叫びの石鏃を埋め

それは、人の間に住み、弓をしぼる。
張りつめる弦は、その音色を変える。
鋼色に移りゆく人の声は蒼い叫びとなり、
空を覆う。
無数の弦に沿って張りつめられた
鋼色の天蓋は蒼い叫びに満たされる。

それは勝利する。天蓋は裂ける。
裂け目から叫びを殺すそれがやってくる。

逃れた蒼い叫びは、変移し、紅い緩慢な砂漠になる。
起立した弦は無限遠方に向かって鉛直に倒れ、
砂漠の上に黒曜石の鏃となって降り注ぐ。

人は沈み、形を変え、地下に流れる水となる。

ある日、水は砂漠に沸き立ち、再び人となり、自ら弓を張るだろう。
魂の矢に叫びの石鏃を埋め、それに放つだろう。
虹色の約束を思い出させるために。
そして、人々は人々の放った矢に刺し抜かれるだろう。

時は、星を配した天蓋を共鳴させ、人々を祝福するだろう。

Posted by gont at 2006年05月02日 04:05