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引っ越しが決まった。引っ越し先のすぐ近くには、小さな川が流れ、川沿いの道を歩くと花がたくさん咲いている。あじさいの花の色を見ると、そろそろ梅雨だなぁ、と思う。縄文時代にはあじさいはあったのかな?
引っ越しの経緯はこうだ。……
ある日、ジョギングをしていて「北に行けるだけ行ってみよう」と思い、街道を北へ北へと走っていった。1時間ぐらい走ると小さな川にぶつかった。川沿いのジョギング道が走りやすそうなので、誘われて右折、そのまま川沿いを走っていく。東進すれば、昔にアパートを借りていた朝霞に出るな、と思った。
埼玉の朝霞にいた時、高台から降りた谷津田の中に、その川の下流が通っていた。「もし縄文人なら、この川を西に少し入ったところ、川を臨む丘に住むだろうな」と思った。子どもの頃、アマチュア考古学ファンだった自分は、土地の見方が「縄文人」になってしまう。実際、大きな川に出会う小さな川の両岸、舌状台地は、狩猟・採集・漁労民にとって最高のロケーションなのだった。
小さな蛇行を繰り返す川沿いのジョギング道を走りながら両岸の低い台地を見る。いい雰囲気だ、直観的に「縄文遺跡があるな」と思った。と同時に、住むならこういうところだなぁ、と。あとで知ったのだけど、実際に縄文遺跡があり、公園になっていた。
しばらく走って川から離れ、折り返し地点に適当な西武鉄道の駅に立ち寄った。駅前の不動産屋のウィンドウをチラリと見たら、川沿いの中古住宅が目についた。帰り道、次第に妄想が膨らむ、「今の賃貸で暮らすよりも安くなるかも……なんとかならないかな?」
こうして、不動産物件を見て廻る日々が始まった。もちろん、走って。広告チラシも図面もアテにはならない。外観だけでも現物を先に見に行く、実際にロケーションを感じる、それでいいと思わなければダメ。ネットでもさんざん検索し、不動産会社に電話をかけ、住所がわかったら、すぐに見に行く。
しばらくして、大きな実績もない自営縄文人は、現実の厳しさを思い知らされる。不動産会社や銀行は、客にならない縄文人の夢想なんか相手にしないのだ。薄笑いしながら侮蔑の言葉を縄文人に投げつける不動産営業マンもいる。だが縄文人を侮ってはいけない。彼は狩猟民だ。自らの足で獲物を見つけるまで、とことん探しまくる。
縄文人らしからぬ話しをすると、今後のインフレや、歳をとった時のことを考えると、賃貸で行くより現物に住む、銀行に頼らず、というのは一つの手かもしれない。あとは自力でなんとかするしかないのだし。
結局、走れば何かにぶつかるものだ。縄文人に理解のある(?)営業から、外に出していない川沿いの物件を紹介される。駅から遠いが、川が見える場所だし、ロケーションはよい。竪穴式住居ではないけど、古い。「となりのトトロ」風に言えば「ボロォ〜」。かなり悩む。いちばんの問題は、仕事、事務所に使えるかどうか。前の持ち主が自営で洋裁をやっていて、ミシンを複数置いて作業していた部屋があった。決め手はこの作業部屋だった。自力で直せる部分は直すことに決めた。外壁に関しては、梁にクライミング・ロープをかけ、ユマールで自己確保しながら修復する。縄文人、かつ、ビルの窓拭き屋ならできる。
こうしていろいろ面倒な手続きを経て、一件落着、6月半ばに引っ越しが決まった。川沿いのあじさいの花を見ながらジョギングできる日も近い。