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2006年01月31日

自動破壊タイマーのつづき

[ 0-日々のFLAG ]

 自動破壊(機能停止・自動警告)タイマーについて、再び考えてみる。

 少し古いけれど、アニメーション映画の『風の谷のナウシカ』に出てくる飛行機などのエンジンは、太古の時代の遺物として発掘されたモノを利用している、という設定になっていた。王族は何代にも渡って同じエンジンを積んだ戦闘機を相続し、戦闘機一機が国を守る象徴となっていた。エンジン内部はほとんどブラックボックスになっていて、それを修理する技術で成立していた工房都市国家まであった。それと対比されるのが、巨神兵という超テクノロジーであり、映画では大地を焦がす力を発揮するものの、ほんのわずかしか存在できず、壊れて(腐って)、破棄されるのだった。

 タイマーのどこが悪い、という反論もあるだろう。
 商売なんだからどんどん売って儲けるのは当然だ! なにを甘いことを、という論は、じゃあ勝手にどうぞ、なのでスルーしておいて、その他の反論を予想するとこうなる。
 高齢者に向けた製品の場合、その製品の寿命を知らせたり、事故を防ぐために自動的に止めるのは必要な措置ではないだろうか。注意力が散漫となった老人が製品の安全チェックを怠れば、ちょっとしたことで事故が起こる。壊れたことに気づき、修理に出すにしても、修理費が高くなってしまうことを考えるならば、新品を購入してもらったほうが良くはないか? さらに改良された製品は結果的に安全であり、効率的であり、環境への負荷も低くなるのではないか? そういった対策をしないでいるほうが問題ではないか、と。

 新しい製品のほうが使い勝手がよくて、便利で、効率がよくて、環境負荷が低いならば、それを買いたくなるだろうけれど、最初からタイマー付けておくというのは、そういう付加価値が作れないようになってしまったのかな、と思ってしまう。
 タイマー付きは、新製品に魅力がないことの証明になってしまう。
 そうなると、これまで使い続けてきたモノや道具をいかに大切に使い続けるか、そのほうが重要になってくる。
 修理にお金がかかるのは、修理できないように作ってあるというより、人間が作らず、機械が機械を作るようになっているからだと思う。人間の手で作られたモノは、人間の手によって修理できる。機械が作ったモノはあまりに複雑になって、中がブラックボックス化する。
 メカニカルの古い一眼レフカメラは職人が修理することができ、それゆえに長く使える。ネットで調べれば、一眼レフ修理サイトがたくさんあると、知り合いが教えてくれた。完全な電子式のカメラは、一度壊れてしまったら修理はほぼ絶望的なので、捨てるしかない。そんな時代に、日本のカメラメーカーのほとんどがデジタルカメラにシフトしていき、旧来のフィルムから撤退していく状況がよくわかる。
 修理可能な道具やモノの制作の時代は過ぎ去り、そのようなモノづくりができない時代にいて、気に入った道具を長く使い続けるにはどうしたらいいだろう。
 日本人にはモノを供養する習慣がある。モノには魂が宿ると考えているから。習慣化したのは江戸時代からかもしれないが、同業が使い古した道具を持ち寄って燃やしたり、塚に埋めたりしてきた。道具としてのモノを平気で壊したり、捨てるような考え方には、違和感がある。重要なのは使い古すということであり、それは何度も修理して、使い続けることができる、そういう道具として存在しているということなのだった。
 壊れたら捨てればいい、壊れたら止めればいい、という考え方を押し進めると、「存在の安楽死」に繋がる。一部に不具合があるならば、全体そのものを消し去るという方向。老いたモノや老いた人は廃棄するという考え方。こうした考え方そのものが、一種の、思考の廃棄、ではないだろうか。問題にぶつかったら、それを解決しようとする、それが日本の技術を支えてきたと思うのだけど……

 さて、再びもとに戻る。
 正義は常にタイマーとともにある。ウルトラマンを見ればわかる。しかし、ウルトラマンは何かを創造しない、彼は破壊するのだ。
 何が言いたいかというと、タイマー付きの道具とは、常に、兵器だということなのだ。
 兵器は、敵を破壊しつつ、敵に奪われないために、自動的に消滅するのである。

Posted by gont at 2006年01月31日 20:25 | TrackBack