サマーウォーズ

poster15『サマーウォーズ』(細田守監督作品)

poster15『サマーウォーズ』(細田守監督作品)

ネタバレ注意。

観てきました。
一言、おすすめです。


アニメです。
夏休みのお盆の頃に帰省して親族たちが集まってるところに、ネット上でトラブルが起こり、それに親族で立ち向かう(?)という、一夏の大騒動劇、とでもいいましょうか。
田舎の本家での集まりと、ネットの大事件がシームレスで繋がってる、なかなか強引な設定(・・・セフセフ)。

ランダムに印象を。

あとで考えると設定に疑問がたくさん出てくるんですが、観ている間はそれを感じさせない「動きと絵」です。

戦闘シーン、かっこいいなぁ。
でも、背筋がゾクゾクしまくる、というほどではないです。
子どもの頃ならそうだったかもしれないけれど。

地方鉄道の列車内の天井についてる扇風機!

バスの後部座席、田舎の林道みたいな路線だとウネウネ曲がってるんで、背景が左右ヨコにグルグルーって動くんですよね、それがよく描かれています。

数学オリンピック日本代表の候補だった、ならば日本ナンバー1のイケメンをライバルとして出してくるとよかったのにな。
あと、物理部の友人も、もっと絡んで欲しかった。
彼は夏休みはずっと部室で応援なんだけど・・・

なつきのバイトという設定に無理が。
ばあちゃんに彼氏を紹介するためにここまでやるだろうか? それだけの動機付けの深さがないような。
それに応募してついていく、というのもなぁ、すごく軽い動機だけど、遠いし、内容わからないし、ついていくかなぁ。
ネットでストーリーを再確認して、あぁ・・・そういえば、バレて帰るときになったとき、すごいサバサバしたお礼を言ったところも、希薄だよなぁ。
自分自身の夏休みの計画とか、自分の両親とか、あまり関係ないのか・・・そのあたりの個人史的な背景も希薄。
それが最後は、勝利にこだわる気迫へと変わる、わけですが。

カズマ、女の子かと思ってた(そのほうが話に厚みでないかな?)。
アバターでの格闘、かっこよかったね。
いじめられっ子半ヒキ状態からのリア充復活(?)の過程、もう少しはっきりわかるとよかったかも。

屋敷の立地、その周辺地図、所有している山や土地の歴史的背景とか、そういったことがあまりよくわからない。
建っている建築物が、そうやって建っているには、それなりの理由があるはずで。
新興住宅地の造成地にいきなり作られた和風レストラン的なる感じを受ける(→土地売って云々のわびすけのせいなのか?)

公務員と元公社と医者と自営の社長さん、男性たちはそういう仕事に就いている。そして強力な人脈、これは女性のほうに就いている(ばあちゃん)。
これらの膨大な資本力と、外部から来た数学的な頭と、ネット上の運動センス(?)が勝利に鍵だった。

別れた者たち、新しく出会う者たち、引き合わせる力、和解させる力は、
「飯」と「ひとりよりは複数のほうがいい」ということ。
文化人類学的に言えば「共食による罪の共有、禁忌の発生、物語の発生、共同体の発生」ってことか。
みんなでおばあちゃんというリソースの最期の晩餐、ということだった。

ネット側が悪として描かれる。家族空間の外部としての健二くん、養子のわびすけ。それが、日本的な(母系?)家族空間に包摂される物語?

高校野球。ゲームなのか勝負なのか、登場人物が多いこともあって、描き方が雑だったかな、仕方ないか。もっと絡んで欲しかったな。

大量のアバターを欲しがるわびすけAIのラブ・マシーンって、大家族の外縁でしか存在できなかったわびすけの欲望、
わびすけは、ばあちゃんの持っている中心の力が欲しかった。
でも、ばあちゃんが死んでしまって、力が欲しいんじゃなくて、単に承認されたかっただけだったことに気づいてAIを解体?
そこらへんの気持ちがどうもよく描かれていなくてね。
プログラムの設計思想みたいなものがよくわかるとよかったな。

この家族の内側だけのもめ事が、全世界に迷惑をかけていく、それを家族で修復、というのがどうも釈然としない。
もっと複雑で深い関係がないと、こんなふうに話は展開しないのではないかなぁ。
もちろん最後はみんなの(IDを与える)応援力が勝利に必要だったのだけど。
むしろ小さな共同体の心的な内宇宙が修復されることの比喩なのかなぁ。

それぞれの親族のおじさん・おばさんのキャラは「あぁ、いるいる」だったな。
こんなにたくさんの人、よく描けてるなぁ。
でも・・・今の若い人はまったくピンと来ない人もいるかもしれない。
自分にはもう、こういう集まりはなくなってしまった。思えば遠くへ来たもんだ?

いろんなところで応援力が発揮されていた。
応援力というのは、一種の祈り。遠くとおく距離も時間も離れているので相手に直接力を与えることはできないけれど、それでも相手を気遣う心、ということ。
そのために特別の時間を作る、ということ、その時間は相手を思いやるということなんだ。
その行為や思念というのは、それをすることだけでは、科学的にはまったく無意味かもしれないけれど、応援している/されているという相互の了解がある心的状況では、とてつもない力を発揮するのだ。
最近、こういうことがないがしろにされすぎているし、それこそ、怪しい宗教やネズミ講のような詐欺に引っかかる温床になっていたりすると思うな。
あ、なんかここは熱いな、オレの反応。

船持ってきたり、コンピュータ持ってきたりしたところは、ほんとに笑った。いいなぁ。絶対に無理なことをありえない方法で実現するところがすばらしい妄想力=物語構築力=現実に負けない力。

人工衛星。原発を標的にしたり、制御不能で地上に落下する可能性が出てくる時点で、もう全世界の軍隊が対処開始するはずで、弾道ミサイルで衛星軌道上に向けて攻撃かけたり(可能かどうかは知らないけど)、日本だったら落ちてくるところでMDで撃ち落とそうとするとか(詳しい対応は知らないけど)、サイバー部隊はOZを制圧するために圧倒的なサイバー戦争を仕掛けたりするだろうし。
その時点で、OZクラックに関係したとされる彼だとか、AIを作ったわびすけは、公的機関に拘束されると思うんだけどね。

だいたいOZってどこで管理しているのか、運営主体はどこなのか、とか。
基本的には日本の企業が主体なんだろうけど、公務員のIDを使えば公務を遂行できる、って時点で国や地方自治体絡みだろうし。
日本以外でも使われているシステムだとなると、どのような機関・組織が関わっているのか、そういう背景がよく見えない。
陣内大親族以外にも、膨大な量の抵抗組織というか、連合部隊があっていいわけで、最終的に陣内に任せる、というところになるといいのにな。
特に日本の自衛隊、警察との関係が曖昧で・・・(それを細かくすると、押井氏の世界になってしまうか・・・要素が多すぎて全部は無理だよね)

恋愛ネタとしては、さらっとしてる。そんなもんか、高校生の夏なんて(オレは知らん!(笑))
違うか、これから恋愛するのか。そのための盛大なお膳立て? たいへんだな。

縁側から見る入道雲の連なり。実際にあんなふうに見えるのかな。あっちは北のほう?
日本的な影絵の絵図として単純化・記号化してるとしても、ちょっとやりすぎかな、という気もした。

お通夜やお葬式はちゃんと描いたほうがいいけど、だからといって深刻に描くのはまた違うわけだけど、もっとショックはあるはずだな。
途中までOZが修復されて、生き返るのかと思ってたぐらいだった。

わびすけおじさんが何をやっていたのか、それを示す数カットがあるとよかったのにな。
英語で話すとか、外国のオフィスのブース映すとか・・・凄腕PGで、金をかけて実際に何をどういうふうにしたかったのか、彼の作ったネットワーク上のAIがどのようなものなのか、明確じゃなかったし、それを利用しようとした米軍や、その後に彼が自分で名乗り出たことや、その顛末がよくわからない。
おばあちゃんを間接的に殺してしまった、という贖罪の意識があるのはわかるけれど。
大団円としてこれでいいのだろうか、と。
映画館入ってまずはビール買ってアイフォンでついったしてたので、感情移入は「ビールとアイフォン」のわびすけおじさんでした。

鼻血で終わりでいいのかなぁ、と、なんかなぁ・・・血とか怖いし。
温泉湧いてたり、近隣のお悔やみもいいんですが、なんというか、この終わり方でいいのかな、と。

まとまりないですが、こんなところです。

でも総合的にはとてもよかったです。はい。