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<<「死者の民主主義」を巡る断想 2006年夏・黒目川から朝霞水門>> |
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夏の甲子園で優勝した早実の斎藤投手が連投疲れを癒すために入っていたという酸素カプセル(通称:ベッカム・カプセル)、スポーツ紙によると一式400万円するそうだ。決勝戦の朝もギリギリまで入っていたという。
グーグルでベッカム・カプセルで検索すればいくらでも出てくる。
http://www.azegami.com/sanso/
効果は確かにあるのだろう。ベッカムが骨折したとき酸素カプセルを使ったことで有名になったわけだし、ヤンキースの松井も使って骨折からの復帰を早めようとしている。医療現場では酸素吸入器は普通にあるわけだから、使わない手はない。
酸素カプセルは美容や健康の効果は高いみたいだし、労働の現場でも使えるような気もする。長距離トラックのドライバーの居眠り運転防止にも使えそうだなー、コンビニで買った白元の酸素缶を徹夜の仕事中に吸ったら一瞬だけ眠気がとれたのは事実(正直、効果は持続しない、というか、こんなのまで吸って仕事するのはかなりヤバいよな、と)。
でもなー、高校野球で酸素カプセル使用はありなのか? と思ってしまうのだった。「野球部って金あるよね」という、貧乏体育会系部出身者のヒガミかもしれんけれど。駒大苫小牧の田中も同じように、ベッカム・カプセルを使っていたらどうなっていただろう、と。
だがしかし……不公平だからといって高校野球でベッカム・カプセルを禁止するのもおかしいのだった。ベッカム・カプセルを否定してしまうと、野球部専用グラウンドも否定しなければならないし、夜間照明施設も否定せざるを得ない。豪華な設備はいいとして、では、雪の多い地方の体育館まで否定できるだろうか。そう考えていくと、道具を使って団体で行うスポーツは、どうしたって、資本の投下量が勝敗を左右するのだと思う。もちろん、素材としての選手は必要だし、そのうえで育てて、強くして、勝負させるわけだけれど。
プロ野球ではチームの強さと資本の強さが正の相関にない場合もあるようだが……高校野球のほうが、素材の弱さそのものを補う人工的な道具や施設が効果を発揮しやすいのかもしれない。そうなると、今後のスポーツ・ビジネスは、若年層に対してお金を投じて盛り上げる方向にどんどん移行するんだろうな。若手の有望な選手を先に囲ってしまうのだ。プロサッカーの世界はすでにそうなっているらしい(南米や欧州)。インサイダーで未公開株を手にして儲けるのと似ている。日本でもJリーグがそうなんだろうし、拳闘の世界では亀田的なるものが必要なのだろう。これはスポ−ツに限った話ではなく、たとえばブンガク賞のある文壇もそうだろうし、スターシステムがないとやっていけない世界なのだった。
広告代理店やメディアやスポンサーにとって重要なのは勝敗の予想が明確であること、マーケティングで勝利できることが重要で、言ってみれば予測できない奇跡がスポーツで起こっては困る。予定の勝利は絶対化され、すべてがお膳立てされ、ベッカム・カプセル程度では済まなくなり、筋肉増強剤やら、疲労を感じない覚醒効果のある薬、強力な鎮痛剤の使用だとか、そういう方向へどんどん流れていくだろう。スカッとさわやかな熱闘甲子園や君は美しいサッカーにはそんなことは決してないと思うけど……居酒屋で宴会やったり、喫煙でオジャンになるのはまだかわいいほうなのかもしれない。
まだ話は続く…かつて米アポロ月宇宙船で地上での訓練中に火災が発生して、酸素のおかげで訓練中の宇宙飛行士3人も燃えてしまった。それ以来、酸素ではなく、空気で宇宙船の中を満たすことになったそうだ。高濃度酸素が常に良いとは限らない…高濃度の酸素に頼りすぎると、低酸素化の高所でトレーニングすることで酸素摂取能力を高めているスポーツ選手には勝てないだろう。酸素はあくまで、補助的役割だと思う。
また、スポーツで使われるさまざまな薬剤(市販のスポーツドリンク含む)は大丈夫なのかと思うことがある。スポーツドリンクに含まれるアミノ酸等は身体にどうなのか、と。酸素の場合は、酸素を使い過ぎて、いずれウラシマ状態にならないのか、と。
登山では減圧室があるけれど、あれを使ってトレーニングしてヒマラヤに登るというのはどうかと思う。無酸素で登頂しなければ無意味だとは言わないが…使用の終わった酸素ボンベを山に捨てるようなら登らないほうがいい……そんなわけで、自然な状態で勝負するのがいちばんだなーと思うわけです。